BOOK

マリオ・バルガス=リョサ「フリアとシナリオライター」

Mario Vargas Llosa (1977) "La tia Julia y el escribidor" (Aunt Julia and the Scriptwriter, 1982)1950年代の南米、ペルー。僕は18歳の大学生で法律を学んでいるが、小説家になりたくて、ラジオ局でのアルバイトの合間に短編小説を書いている。その頃ほ…

ラッタウット・ラープチャルーンサップ「観光」

Rattawut Lapcharoensap (2004) "Sightseeing"タイ人作者による短編集(+中編1)。社会的不公平にあふれるタイの生活を切り出してみせ、高く評価されたという25〜26歳時のデビュー作。ガーディアン、LAタイムズ、ワシントン・ポストなどの書評欄で取り上げ…

ヒネル・サレーム「父さんの銃」

Hiner Saleem (2004) "My Father's Rifle"クルド人の映画監督(カンヌやヴェネツィア国際映画祭で高く評価されている)である作者が、サダム・フセイン政権下のイラクで過ごした少年〜青年期のことを振り返る、自伝的な小説。 クルド人は「独自国家を持たな…

柳家喬太郎「落語こてんパン」

現役屈指の人気落語家・柳家喬太郎が古典落語を紹介するエッセイ。 現在もポプラビーチというウェブマガジンに連載中で、5年50回分(2004年4月〜09年6月)をまとめて本にしたもの。 落語こてんパン作者: 柳家喬太郎出版社/メーカー: ポプラ社発売日: 2009/04…

アンドレイ・クルコフ「ペンギンの憂鬱」

Andrey Kurkov (1996) "Death and the Penguin"ウクライナの首都キエフ。売れない小説家のヴィクトルは、編集長から依頼されて、生前に書いておく死亡記事を書いている。ヴィクトルの心の友は、動物園から引き取ったペンギンのミーシャである。憂鬱症で心臓…

マークース・ズーサック「本泥棒」

Markus Zusak (2005) "The Book Thief"ナチス政権下の抑圧された時代。ドイツの田舎町、モルキングのヒンメル通り33番地に、里子に出された9歳の少女リーゼルがいた。義理の親となるフーバーマン夫妻のもとで、リーゼルは毎日を過ごす。レモン色の髪の少年、…

ヤスミナ・カドラ「テロル」

Yasmina Khadra (2005) "L'attentat" (The Attack) 「なぜ妻は自爆したのか?イスラムの哀しい夫婦の愛を描いた野心的傑作」(帯より)イスラエルのテルアビブ。アラブ人のアミーンは民族的な差別を乗り越えて、エリート外科医として成り上がり、妻シヘムと…

フィリップ・クローデル「リンさんの小さな子」

Philippe Claudel (2005) "La petite fille de Monsieur Linh"家族愛と友情の物語。穏やかで優しい気持ちになり、リンさんの「冒険」を応援したくなること請け合いです。老人の名はリン。周囲はみな戦争で死んでしまい、彼の人生に残されたのは孫の赤ん坊だけ…

ブッツァーティ「神を見た犬」

Dino Buzzati 「イタリアのカフカ」と呼ばれた作者ディーノ・ブッツァーティ(1906-1972)の代表短編集(22作品入り)。いずれも主題を語るためにストーリーが用意してあるという形の、計算され尽くした作品群です。 神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)作者: …

アントニオ・タブッキ「インド夜想曲」

Antonio Tabucchi (1984) "Notturno indiano"「彼の名前はシャヴィエルです。インドで失踪してしまったポルトガル人です」。写真はなく、あるいのは彼の思い出だけだ。そして思い出は僕だけのものだから、描写するわけにはいかなかった。彼は悲しい運命に生…

カーレド・ホッセイニ「カイト・ランナー」

Khaled Hosseini (2003) "The Kite Runner"「怪物なんていないよ」50ダースの色とりどりの凧が真っ青な空にあがり、上空を滑空したり旋回したりしている。子供たちは歓声をあげ、路地ではカイト・ランナーたちが敗者の凧をめがけて走っていく。依然としてわた…

ジュンバ・ラヒリ「停電の夜に」

Jhumpa Lahiri (1999) "Interpreter of Maladies"ありふれた日常の中にある違和感やすれ違いを提示して、2点間の距離が変化する場面をしっかりと描写した作品群。繋がっていたのが離れたり、閉じていたのが開いたり。 ほとんどの作品では、何かが足りずに満…