夢金

聞いた落語を備忘録として記してきたが、キリがなく、飽きてきた。一方、何かが書けるくらいの量にはなっている。そこで、私が聞いた演者の演出をひっくるめて筋を書き、続いて、思ったことをまとめてみる。


まずは冬の定番「夢金」。下記あらすじの軸は六代目三遊亭圓生

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備忘録

桂文楽(八代目)景清」痛切、そして・・・。

五感のうちで、目が見えなくなることほど辛いことはないと思う。
ひとり、全盲の知人がいる。バスの停留所で偶然に任せて会うだけで、数か月会わないときもあれば、続けて会うこともある。数カ月ぶりに会ったときも、即座に私の名前やプロフィールを思い出してくれて、「どうしているかなと思っていたんですよー」とお世辞を言ってくれたりもする(目が不自由な人の、耳の記憶力は凄まじいです)。バスに乗っている間、互いの近況を話し通す。バスは15分。その後、地下鉄の改札口まで連れて行くのに5分。それだけの関係だ。

一方、地下鉄の出口付近、周囲には通行人が数百人。目が不自由な人が、明らかに道を見失っている。壁のところに立ち止まって、途方に暮れている。しかし、誰一人として手伝おうとしない。数十メートル離れたところにいた私が着くまで、手伝う人は現れなかった。それどころか、明らかに避けて通っていく人も。そんな場面を見たのは、決して一度だけではない。一見して無理なほどの重い荷物を持つ人、車椅子の人、道が分からず困惑している外国人。歩き去っていった人々も、自分が所属し利害関係のある組織内では、他人に優しく振舞っているのだろうと思うと、腹が立つ。

聞かれるのを待つのではなく、こちらから声をかけよう。いい気分になるんだけどな。

備忘録

圓生ちきり伊勢屋
上下2時間の大作。

よく当たる占い師に「半年先の2月15日に死ぬ」と宣告された若旦那。施しをすれば来世で長生き出来ると言われ、金をどんどん困っている他人のために使う。死期の直前になると、今度は自分のために使い、豪勢な遊び三昧。そして迎えた2月15日。小言を言いながら自ら棺の中に入り、準備万端整ったが・・・。

積善の家に余慶有り。面白く感じたのは、一見すると、出世が大事という価値観が最後まで変わっていないように見えたところ。今の世ならば「金や仕事以外にも大切なことがあると気づく」で終わらせただろうが、ここではそうした目に見えないものではなく、分かりやすい実を掴ませるところまで持って行っている。最後に自分のために使うところも不思議な感じがした。「家名」や「暖簾」や「死に方」が何よりも大事という当時の世相にあわせたものか、とても見栄っ張りな江戸っ子の姿なのか、圓生だけの形なのか、そこまでやらなければ庶民に夢を与えられないということなのか。
そういえば「五貫裁き」でも、善行を積み続ける人間は店をしくじることになっていた。ここには照れもあるのだろうと思う。善行はわざわざ口に出すことじゃないという、現代にも残っている感覚。当時これは日本人の美徳だったはずだが、今は行き過ぎてしまい、他人に無関心な世の中になってしまった。
ちなみに、来世でも人間として生まれ変わるために、現世で他人に尽くすというのは仏教の考え(人間に生まれ変わるのは、とても難しいこととされている)。一方、自分が死後に天国に行くためなのはキリスト教


たい平芝浜
私は芝浜が嫌いだ。私の中で「泣ける落語ナンバー1」というレッテルが張られており、外れが許されない窮屈さと、涙の押し売りが耐えられないため。たぶん、談志の芝浜がこびりついているのだろう。滑稽話の芝浜を聞くと、そんな呪縛が解ける気はするが・・・。たい平の芝浜は談志色が濃いように思う。1時間近い熱演で毎年進化しているらしいのだが、最初も最後も涙声で、ほら、泣け〜〜〜!という演出はやっぱり好きにはなれなかった。ごめんよ。


雲助夜鷹そば屋
子供が出来ずじまいだった老夫婦のところへ、浪人がやってきて無銭飲食。「さあ、番所に突き出してくれ」と言われたが、あれこれ手伝いさせてチャラにして、さらにこっちからお金を出して、いろんなお願いをする。

落語研究会より。うーん、とても良かった。こういう話をいいと思うようになるのは、経験値が上がってきた証拠なのだろうか。いや、おそらく雲助がうますぎるのだろう。古今亭今輔は「ラーメン屋」という題でやっていた。


小三治
舟徳」87年版で45分。前に聞いた別の時よりテンポは落ちたが、くすぐりはだいぶ増えていた。私は前の方が好きだ。前に聞いたのはいつの音源だったのだろう。
睨み返し」89年版。すごい顔だ・・・怖すぎる・・・。小さんの前で見せたところ、ひっくり返って笑い、「これはお前の噺になるな」と言われたらしい。もうひとつは「百川」だって。


さん喬
百川」丁寧でおだやかでわかりやすくて聞きやすくて、さん喬らしい話になっていた。でも、返事はもっと高い声でいいと思うんだけど・・・くすぐりを捨てている感じがして、もったいなく感じた。その他「棒鱈


文治(十代目)掛取り」いやあ・・・うまいなぁ・・・。


志ん朝
夢金」予想通りに面白かった。何でも面白いね。強欲は無欲に似たり。
化け物使い」化け物との距離感が楽しい。せわしないあまり、誰もが同じに見えるという。


圓生
夏の医者」これも「化け物使い」同様、距離感が楽しい噺。のんびりしたあまり、誰もが同じに見えるという。その意味で「化け物使い」の対照にある。
狂言」今回は音声だけで聞いたのだが、数年前に落語研究会で見たことがある。
お化け長屋」やっぱりうまくて、面白い。このネタはコントにしてもおかしくない。
百川」スタジオ録音バージョンを聞いた。うーしっ!がクリアに聞こえて良かった(笑)。


馬生(十代目)
目黒のさんま」殿様のゆったりとしたテンポはもう、馬生の独壇場。殿様こばなしから、目黒関係へ。「これは美味である!!!」って、マイク近いし、うるさいわっっ(笑)。
その他「夢金


可楽(八代目)
反魂香」当たり前だが、鳴り物のタイミングが抜群。舌の回りが良すぎて、聴きにくい箇所があったけど。「野ざらし」もだが、ひとりで空想の世界を走り回り、その中で女性が「・・・じゃな〜いのっ」というときの口調が素敵(小三治はこれを受け継いでいると思う)。
尻餅」こちらは聴き良かった。出だしは「掛取」と全く同じ。こういうやり方もあるんだね。ひとりが複数人を演じるのが落語だが、この噺は、ひとりが複数人を演じるひとりを演じるわけだ。・・・ああ、ややこし。
その他、「うどん屋」「二番煎じ」「らくだ」「富久」「お化け長屋


可楽(九代目)笠碁」聴きやすくて良かった。


文楽(八代目)
寝床」すごい!!どこで息継ぎをしているんだろう・・・。前半の速射砲のようなギャグの連続に大笑い。たぶん今まで聞いた誰よりも速く、誰よりもスムーズに、がんもどきの製造法を語っていた(笑)。また、おだてられた旦那のかわいさといったらない。そういえば、義太夫を避けてぶつくさいう後半は「茶の湯」と似ていると思う。
船徳」録音状態がとてもよく、ノリノリの文楽は抜群に面白い。「くまんばちさぁ〜ん」など、小三治文楽型なんだな、と実感。
愛宕山」これもいいなあ・・・。
明烏」ちょっと舌が回っていなくて聞きとりにくかった。晩年のものか。

Roschti

あけましておめでとうございます。今年も引き続いて頑張りたいです。去年後半のように出来たら十分です。


昼ごはんにはスイスの定番料理”Roschti”を食べた。昨年末にやまやで買ってきたもの。

パッケージには薄切りされたポテトが入っている。これを熱したフライパン上にあけ、へらでぐいぐい伸ばして、両面をそれぞれ10分程度焼くだけで終わり。
フライパンがちょっとあれなので写真のようにきれいにはいかなかったが、おいしかったです。
うちにあるサツマイモでやってみたらどうなるんだろう・・・。