備忘録

桂文楽(八代目)景清」痛切、そして・・・。

五感のうちで、目が見えなくなることほど辛いことはないと思う。
ひとり、全盲の知人がいる。バスの停留所で偶然に任せて会うだけで、数か月会わないときもあれば、続けて会うこともある。数カ月ぶりに会ったときも、即座に私の名前やプロフィールを思い出してくれて、「どうしているかなと思っていたんですよー」とお世辞を言ってくれたりもする(目が不自由な人の、耳の記憶力は凄まじいです)。バスに乗っている間、互いの近況を話し通す。バスは15分。その後、地下鉄の改札口まで連れて行くのに5分。それだけの関係だ。

一方、地下鉄の出口付近、周囲には通行人が数百人。目が不自由な人が、明らかに道を見失っている。壁のところに立ち止まって、途方に暮れている。しかし、誰一人として手伝おうとしない。数十メートル離れたところにいた私が着くまで、手伝う人は現れなかった。それどころか、明らかに避けて通っていく人も。そんな場面を見たのは、決して一度だけではない。一見して無理なほどの重い荷物を持つ人、車椅子の人、道が分からず困惑している外国人。歩き去っていった人々も、自分が所属し利害関係のある組織内では、他人に優しく振舞っているのだろうと思うと、腹が立つ。

聞かれるのを待つのではなく、こちらから声をかけよう。いい気分になるんだけどな。